デビルウィスパー131
「ふむ、我ながら十年前よりは進歩したな。ほとんどの記憶を消せたようだ」
本来ならもう少し、色々と処置をしたかったのだが……下手なことをすると彼等自身や、あるいは他の異端種に気付かれかねない。
「特に、あの異端種の血を啜る吸血鬼は要注意だしな。可能な限り尻尾は出したくない」
サンプルとしては欲しいが、正面切っては戦いたくない相手。彼等がこの戦いを通して成長すれば、あるいは奴との戦いでの捨て石くらいにはなれるかもしれない。その頃には天使と悪魔の構造を熟知し、今までとは次元の違う人形を作れるだろう。
「期待しているぞ、二人とも」
私が操る人形は胸元から携帯電話を取り出した。相手が出る。
「……ふぁい、こひら、へらさんていひむしょ」
……寝起きだろうか、発音がえらく不明瞭だな。
「九条幸一が、丸谷工場の敷地で倒れている。回収してやれ」
しかし、幸一の名を出すと電話口の相手の頭は即座に覚醒したようだ。
「ちょっと待て! お前、誰だ! 何故あいつのことを」
それには答えず携帯を切ると、ゆっくりと私の操る人形はその場から離れた。