デビルウィスパー132
幸一が薄っすらと眼を開けると、部屋にはすでに電灯がついていた。どうやら、半日以上、寝ていたらしいな。
「……戸崎西高校、原因不明の爆発事故で半壊したため封鎖、か……」
「何があったんでしょう? これも一連の事件絡みなんですか?」
「さあ、な……それはこいつ等が……」
探偵は何やら思案しているらしく、メモに色々書き込んではそれを破り捨てている。
肘をついて幸一がベッドから起きると、側にいた探偵と俊也がそれに気付く。
「幸一! 駄目だよ!」
「……無理すんな。かなりヤバイ顔色だぞ」
俊也は幸一を再びベッドに寝かせつけ、探偵は覗き込むように幸一の様態を伺う。
「……アストは?」
「心配すんな。衣服は血塗れだが、不思議なことに傷はねえよ。返り血か?」
……おかしいな。オレ達はあの吸血鬼と戦い、手酷く傷付き……そう、幸一も女も助かるような傷では無かった。それが何故?
「で、殺人鬼は仕留めた……ってのはねえだろうな。工場の敷地でぶっ倒れてたんだから。相討ちってのもねえよな」
……記憶を消されたか。何者かによって助けられた後、記憶が消去されたと見るのが自然だな。相手がわからんのが悔まれる。
「しかし……何であんな所で」
探偵は腑に落ちない様子で、首を傾げていたが、自宅の電話が鳴ったので口上を切り、俊也が代わりに出た。
「はい、九条で……」
受話器に出た相手が意外だったのか俊也は言葉を切り、
「え? え? い、生きてたの? い、今どこ? すぐ迎えに」
「俺だ」
その応対を見て、相手を推測した幸一は俊也から受話器を奪い取った。
「……生きてたんだ。加減が巧くいかなかったから殺しちゃったかと思った」
やはり……あの吸血鬼だ。殺した相手の携帯でも使っているのか。
「どこにいる?」
「……今は、どこかの公園。待ち合わせする?」
「昨夜の場所でどうだ?」
「……うん。九条君」
「なんだ?」
長い、長い沈黙の後、
「……ちゃんと、来てね」