デビルウィスパー134
階段をおりて行く幸一に、探偵はたまらず問いかけた。
「どうしてそこまでする?! 心ならずとも殺してしまった人達への罪滅ぼしか?! それともただ死にたいのか、お前は?!」
幸一は歩みを止めて、背を向けたまま答えた。
「……あいつが呼んだのは、俺だからだ。だから、俺が迎えに行く」
「幸一!」
俊也は二人の会話の意味がまるで呑み込めていないが、それでもただ事ではないというのはわかったらしい。切羽詰った叫びに、幸一はゆっくりと吐息をついて答えた。
「俊也。アストを、頼む」
その言葉がどれだけの重さを持っているかわかるのは、幸一自身と俊也だけだろうな。
こいつが人にものを頼んだ事など、これまで数える程しかない。
しかもその全ては、自分の力だけでは、どうしようもない類のものなのだから。
「それと……無事を、祈っていてくれ」
告げると、幸一は階段をおり、玄関から闇夜の彼方へと姿を消す。
それを見届けると探偵は悔しげに、壁に自らの拳を打ち付けた。