デビルウィスパー139
二人に支えられてようやくベッドに戻った私は再び立とうと足に力を込める。
「行かなくちゃ……!」
「立ち上がれもしないのに行ってどうすんだ! あいつの足を引っ張りたいのか!」
世良さんの言い分はもっともだ。今の私が行っても、どうにもならないと思う。
でも……!
「一人ってのは……辛くて、苦しいの」
世良さんは私が何を言っているのかわからず、渋面を作る。
「幸一……ずっと一人だったの……周りを遠ざけて、忌み嫌われて……」
私が地上に墜とされ、自我が奪われ、仲間もなく、一人だったのは、ほんの少しの間。それでも、辛かった。苦しかった。
あの吸血鬼に殺されかけて、でも幸一が来た時、『どうして来たの!』と思いつつ……嬉しかった。
「……あんな想い、させたくないの……!」
辛さも、苦しみも、痛みも。
喜びも、楽しさも、幸せも。
背負いたい、分かち合いたい。あんな、一人っきりなのはイヤだ!
額を流れる汗を拭い、私は壁に手をかけ、どうにか立ち上がろうとし……でも立ち上がれなくて、また床に落ちかけて……俊也君に支えられた。行っても足手まといにしかならない私に手を貸してくれるなんて思わなかったから、私は思わず彼を見つめてしまう。
俊也君は小さく頷き、一言だけ言った。
「……わかりました。行きましょう」
「お、おい! 田村、お前、何考えて……」
俊也君は私に肩を回しつつ、世良さんに答える。
「……僕は一度、幸一に宿る悪魔のせいで、殺されかけています」
その言葉は淡々としていたけど、何かが含まれていた。
「以来、幸一は、僕と他の人が近寄らないようにしてくれと頼みました……僕はそれを忠実に実行してきました」
強く、強く唇を噛み締める。
「以来、人は死ななくなりました。でも……あいつは、表情を、感情を見せなくなった」