デビルウィスパー146
完璧な攻撃だ。万一、あの不思議な力で無効化しようとしても、瀕死の重傷がいい所だろう。何しろ最大級の力を十回もたて続けに放ったのだ。全部無効化できる訳が無い。
あたしは獲物の生死を確かめるべく歩を進め、
「……馬鹿が。やはり、素人だな。オレがわざと発した気配に攻撃をしかけるとは」
……それは、あたしが見た事もない奴だった。色素が反転した眼と赤黒い螺旋模様はあたしが求める獲物と一緒だけど……浅黒い肌では無い。
「もうろくに動けまい? 自身の力の限界というものが理解できていないな」
しかもそれは……そう、映像がぶれるようにふい、と消えてしまった。
刹那、あたしは眼を向けた。砂粒のようなものが降ってきた、天井に。そこには……あの不思議な力で三階の床―天井を―破壊し、頭上から襲い来る獲物の姿が見えた。
身体は反応出来なかったけど、姿は確認出来た。あたしは力を使って……!
(……力が、出ない?!)
あの目頭の辺りが灼熱するような感覚が、無い?
避ける事も出来ず、あたしはその獲物に馬乗りの状態にまで追い込まれた。
さっきの奴が言った様に、あたしは限界まで力を搾り出した……ありったけの力を使いたかった。理由は……そう、かつては好きだった人に、物でも見るような目付きで……!
そんな訳ない! あたしは、ただ思いっきり暴れたかっただけ! そんな訳ない!
獲物は色素が逆転した瞳であたしを見つめている。動きようにもあたしは動けない。
「さっさと殺したら! あたしは人とは相容れないバケモノなんでしょ!」
獲物は左腕を振り上げ、何かを睨むようにあたしの胸元を見据えた。
「ここまでは、予定通りだ」