デビルウィスパー148
絶え間なく笑い続ける。
「気が済むまでやればいい。混ざり合った『意思』を可能な限り区別するために、この小娘を怒り狂わせ、吸血鬼の凶暴性を最大限引き出したんだからな。酔狂もいい所だ」
彼は未だに必死の形相であたしの胸元の何かをつかんでいる……引き剥がそうとしているようにも見える。
「さて、オレは一足先にお前の中で待っているよ。今度こそ、『境界線』を越えて、身体を明け渡してくれることを期待してな」
それだけ言い残し、男は消えた。
……何をしようとしているのかは、よくわからない。
ただ……今、私の上に馬乗りになっている九条君が、自分の命を削ってあたしを助けようとしているのはわかる。その背に、何か不吉なものが見えた。死の影のようなものが、ヒタヒタと彼に……九条君に迫っているのが見える。
「やめて! それ以上やったら……!」
「俺は、どうなっても構わない」
その言葉は、渇いていた。
「生きる資格など、無いからな」
……どうしようもなく干からびていた。まるで枯れ果てた老木のように。
「で、でも! それなら、あたしは」
あたしは……生きていても、いいんだろうか? あたしも、たくさんの人を……!
「お前が生きていいか悪いかは、お前一人で出せる答えじゃない……周りの人間と、一緒に探すものだ。罪を償う道を、な」
そして……ふっ、と笑ったような気がした。でもその笑みはすぐに消えて……
「アァァァァ!」
枯れた生命を振り絞るような気合いと共に、九条君は爪の吹き飛んだ左手で……あたしに巣食う何かを、引き剥がした。