破れたカーテン

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デビルウィスパー150

デビルウィスパー150

世良さんは苛立ったように叫ぶと、階段を登り切った所で、あるものを見てしまった。幸一の側にいるあの吸血鬼に向かって、俊也君が走り寄っていく光景を。

「しまった! あいつは彼女が吸血鬼なのを知らないんだ! 田村!」

 警告の叫びを発するが……どうも様子がおかしい。

「田村! 彼女から離れ……」

「……事情はわかりませんけど、多分、彼女はもう危険な存在ではないと思います」

吸血鬼……というのはどうも違和感がある……彼女が襲ってくる気配はない。あの充満するような殺気が欠片も無いのだ。それどころか、壁に身体を預け、ぐったりと座り込んでいる幸一の体をゆすっている。

 世良さんは訝しげに眼を細め……その様子を見て危険が無いと判断したのか、私と一緒に遅い歩調で歩き始める。

「九条君、九条君!」

「動かさないで! 頭を打っているかもしれない!」

幸一の頭部は噴き出した大量の血で深紅に染まり、左手は神経が断裂しているのか、小刻みに痙攣を繰り返している。

幸一は生きている……傷を負っていても、瀕死の重傷でなければ、私の力で―力がもうほとんど無いから、回復とまではいかないけど―維持させることはできる。命を維持さえしていれば、朝日がのぼり、私の力が回復するのと同時に幸一の治療ができる。

 これは重傷だけど、瀕死のレベルまではいっていない。

だけど……私は青ざめた。赤黒い刻印は全身に刻まれ、両目の色素は完全に反転し……肌が、浅黒く変色していたから。

 幸一の右手がブルブルと震えながらかざされ、

「危ない! みんな……」

 眼にするのさえ困難な速度で手刀を揮う。咄嗟に私は近くにいた世良さんを、彼女は俊也君を抱え、その場から跳び退っている。

「こ、幸一? 一体何を」

 俊也君が叫ぶが……眼の前の光景に絶句している。空間が黒い、しかし向こう側は見える薄い闇を垂れ流しているのだ。

 先程の力は、物質、生物、全ての『意思』を断絶させる絶対の一撃。その力で、空間そのものを、破壊したのだ。

「ククク……やはりこいつの身体は居心地がいいな」