デビルウィスパー152
「直接あいつの心に、お前を通して語りかけようというのか?」
しかし、その提案は奴の口から語られた。
「一部の天使には、人の心に語り掛ける力があるらしいな。それを使って、直接叩き起こそうというのはいいアイディアだ。それならば空間越しでも、出来なくはない」
そこで、悪魔は薄い笑みを幸一の顔に貼り付けた。
「だが、出来るのか? そんな状態で? 幸一が『絶望の断崖』を越えかけた時、その力を持ちながらお前は何をしていた?」
問いに、私は拳を強く握った。
不安なのだ……私の属性は風。精神は私の領域では無い……確実に成功させる自信が、私には、無い……
けど……!
「ほう、健気だな。自身の安否を省みずに一か八かに賭けるか」
私は眼を閉じ、精神を幸一の魂に飛ばすべく、集中を始め……
「だが、仮にそれが成功したとしても、百パーセント幸一は連れ戻せんがな」
絶対の自信を持った悪魔の囁きをどうにか無視し、私は、
「それはお前が一番良く知っているだろう、俊也」
「…………」
だけど、俊也君が沈黙したことで、私の集中は容易く揺らいでしまった。眼を開け、顔を向けるけど彼は沈黙を守ったまま。
「言ってやれよ。どうして奴がこちらに戻って来れないかを」
皆が彼を見る中、彼は床に視線を落とし、呟いた。
「……幸一は……」
呟きはとても小さかったが、私達はどうにかそれを聞き取れた。
「そういうことだ。お前たちがどんな努力をした所で、あいつはもう戻れん」