デビルウィスパー159
返答が無い……ククク、これは決定的だ。なにしろ意識が同調しているこの世界では『嘘』というものには何の意味も無い。
幸一が再び歩き出そうと、『絶望の断崖』に眼を向け……
「……そうだ! 僕は……僕が死んでも……たとえ、お前の手で殺されても……お前には生きていて貰いたいんだ!」
馬鹿な! 信じられん……自分がどうなってもいいと言うのか? 一片の嘘偽りも無く……狂っているぞ、こいつ……!
「……もう、逃げない! あんな後悔はもうごめんだ! お前が僕を殺してしまうから遠ざけると言うのなら、僕はあえて、死を承知の上で、その側でお前を支えてみせる!」
「……嘘だ」
幸一は呆然と……光が徐々に戻ってきた瞳を俊也に向け、拒絶する様に首を横に振る。
「お前はどうだったんだ! こうなることがわかっていて三桜さんを助けたじゃないか! どうしてそうしたんだ! 生きて欲しかったからだろう?!」
……クソ! 悩み、苦しみ抜いた末の回答がこれか! やはり俊也だけは、快楽抜きで殺しておくべき相手だったか……!
「おいコラァ! テメェ、わかってんのか?」
探偵は俊也を押しのけ、唾を飛ばし喚き始めた。
「四人だ! 自分の命なんかどうなってでもテメェに生きてて欲しい、戻ってきて欲しいと思っている奴が、四人もいるんだぞ!」
怒っている、と言ってもいい口調で探偵が叫ぶ。
「なのに、テメェは死ぬって言うのか! 答えろ!」
「幸一! 私の言ったこと覚えてる? 苦しみも、悩みも、一人じゃ無理でも……みんなとなら、背負える」
マズイ……闇に閉ざされた精神世界に光が差し込んできている!
「楽しみ、喜び……みんなとなら、一人の時よりずっと楽しいし、喜びも大きい」