デビルウィスパー160
手を差し伸べ、
「一緒に、分かち合おうって、言ったよね?」
それに、俊也、吸血鬼、探偵が倣う。
「みんなとなら、背負えるよ、どんなに重くても」
四つの手が伸ばされ……
もはや静観は出来ん……!
かくなるうえは……不確実だが、幸一の精神世界ごと奴等を抹殺する! 逆に怒りで幸一の生存本能を刺激しかねん上に、うまくいっても奴自ら身体を明け渡した場合より力が落ちる……が、この際贅沢は言ってられん。
絶望の淵へまとめて叩き込んでくれる!
オレは力を解き放つべく、前方の四人、特に吸血鬼と墜天使に注意を注ぎつつ、精神を集中し始め……
「させんぞ!」
しまった! 前に注意を向けすぎたか!
まさか幸一がこうも早く自我を取り戻すとは!
振り解こうにも、両腕でガッチリと羽交い絞めにされている。これが、精神力ではなく、膂力が反映される現実世界ならば容易く振り解けるものを……!
クソ……こうなればやむをえん!
意図を察した幸一は、以前よりもはるかに強い意思の光を湛えた眼を叩きつけてきた。
オレは羽交い絞めにされた状態から、精神波を幸一の精神世界に解き放った。
黒い闇が世界を侵食していく。
それを打ち消そうと、辺りから差し込む光が闇を照らし始める。
幸一は片手だけをオレから離し、四人に向けた。
ここはあいつの精神世界。自我さえ取り戻せば、精神の破壊性を持つオレはともかく、他の奴等を排除することは容易。
奴等を脱出させつつ、幸一は何かを呟いた。
それに答えようというのか、女が何やら叫んでいる。叫びに対し、幸一は頷いたようだ。
幸一はオレを解き放ち、真っ正面から向き直った。
……精神世界はオレの領域。ここでは勝ち目がないからこそ、幸一は戦いを避けてきた。そう、こいつは常に逃げていた。その選択は正しい。
にも関わらず、こいつは……今、ここで白黒をはっきりつけようとしている!
しかも、己の勝利を信じて疑っていない!
これまでとは比較にならんほどの意思力……!
自身の不利を悟りながら、どうしてそんな眼が出来る?!
よかろう……!
「……希望も未来も、貴様自身の命もまとめて終わらせてくれるぞ、幸一!」
「……俺は、生きる。生きて、あいつ等の待つ世界に戻る!」
四つの叫びが消えるのと同時に、オレの闇と幸一の光はさらに激しく衝突をはじめた。