デビルウィスパー127
「あれ? 九条君?」
クククク……『覚醒者』ではあるまい、予想通り『適合者』! 運命を司る神は、今回に限っては人間の味方では無い様だな!
「……三桜……なのか?」
問いに答える少女……じゃないな、もう。吸血鬼の双眸は、血に飢えているのが簡単に見て取れる。クスクスと笑う様からは、人間の頃の面影は見えない。今までの殺人の主犯はコイツだと、血によって赤黒く染まった制服が雄弁に物語っている。
「……どうして……お前が……!」
「さあ? あたしにも正直、わからない。吸血鬼みたいな奴に襲われて、血を吸われた所までは覚えているけど」
本来、吸血鬼に血を吸われた奴はそのまま死ぬ。しかし……そう、人間の話にもあるように、吸血鬼となる奴がごくまれにいるのだ。そいつらを、狂信者は『適合者』と呼ぶ。
確率としては、『覚醒』するよりもはるかに低いのだが……しかし、望んだ通りにはいかなかったが、これは中々いい展開だ。
「……なら」
「なんか巷では色々言われているみたいね、あたし」
血に濡れた手で口元を覆い笑う様は中々悪魔じみている。
「うん、そうだよ。血が無い死体は、全部あたしが殺したの」
「……何故……!」
幸一の呻きは、何故こいつが適合したのか、という不運を嘆くものか、あるいは何故人を殺したのか、という問い掛けなのか。
吸血鬼は、それを後者と取ったようだ。
「だって、血を吸わないとあたし、死んじゃうのよ? 喉が渇いて渇いてしかたが無いんだよ……悪いってわかってたって、吸わなきゃ生きていけないんだもの!」
噛まれたことによる『適合』ではなく、遺伝子の突発的な変異、『覚醒』によって吸血鬼として誕生した者にも、この『渇き』は存在する。これは、人が水や食糧を欲するのと同じ欲求。収まるにはただ待つしかない。